蔵の街とちぎ 大毘盧遮那殿 満福寺(満福密寺)

閑話休題

ケチがついてまわる東京オリンピック

令和3年2月12日
 ふり返れば、東京オリンピックには最初からケチがついていました。
 平成25年(2013)9月、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで行われたIOCの総会で、2020東京オリンピックを決定づけた高円宮妃殿下の流暢なフランス語・英語でのスピーチと滝川クリステルさんのチャーミングなフランス語と「お・も・て・な・し」スピーチの快哉以後、今回の東京オリンピックはずっとケチがつきっぱなしです。
 先ず、すでに決定していた国立競技場の設計が異例のやり直しとなり、次いで、これまた一度決定した公式エンブレムに盗作疑惑がもち上がり、結局選定のやり直しになり、それぞれ巨額のお金がムダに使われました。
 次いで、ボクシング・柔道・体操・テコンドー・女子レスリング等々の競技団体でさまざまなパワハラ問題が表ざたになり、さらに主役である東京都知事の猪瀬さんが政治資金問題で失脚し、次の升添都知事も公用車の私的使用問題で辞任に追い込まれ、そのあと登場した小池さんも小池新党と言われた「希望の党」が民主党を分解させましたが、早々に自分の党までが空中分解し、今は細々ながら都議会の「都民ファーストの会」の女王。2020東京オリンピックの主役のはずなのに、犬猿の仲だと言われる森組織委員会会長にお株を奪われ、目立ちたがり屋が目立つこともできずにいたところ、急に襲いかかった新型コロナウィルス感染。東京経由の感染が拡大し、東京はあたかもコロナの感染源と化しました。そのお蔭で東京オリンピックはやむなく一年延期となり、最大限のケチがつきました。
 国政は国政で、オリンピック開催時の総理大臣であるはずだった安倍総理が体調不全で急に辞任し、代った菅総理は存在感がなく外交的でもなく、オリンピックのホスト役としてはいかにも不似合。そこに、今回の森組織委員会会長お得意の失言~辞任です。ざっとふり返っただけでも、よくぞここまでケチがついたものです。

 然るところ、私から言えば、さらに新たなケチがつきはじまりました。
 コロナ禍のなかで、いつの間にか「コロナを克服した東京オリンピック」というキャッチフレーズがまことしやかに言われています。とんでもありません。「のど元過ぎれば熱さを忘れる」とよく言ったもので、熱しやすく冷めやすい日本人、もう「東日本大震災からの復興五輪」を忘れたのでしょうか。小池都知事が、例の思いつきパフォーマンスで、ボート競技の会場を被災地の宮城県の湖沼ではどうかと言い出し、私こそ「復興五輪」の主役だと言わんばかりに自ら現地視察に赴いたのはつい昨日のことですが、昨今は「復興五輪」のキャッチを捨て「ウィズコロナ」「コロナ五輪」だそうです。
 ずいぶん東北の人に失礼な話です。あの「がんばれ東北」「被災地との絆」はどこにいったのでしょう。「コロナを克服した東京オリンピック」とはいったい何でしょう。ある識者が言いました。「コロナの克服」はオリンピックのテーマか?「コロナ克服」は「大震災に学ぶこと」「東北に学ぶこと」。つまり、菅総理が白々しく言う「自助・共助・公助」などではなく、大震災の時に東北の人たちが自発的に行った「となり同士が助け合う互助」。いちばん身近にいる人が互いに助け合う、つながっていることだ、と。そう、コロナは「となり同士」の人間関係がうすい、知らない同士の大都会が苦戦しています。コロナが浮き彫りにしたものは大都市に住む人間のつながりの弱さと貧しさです。オリンピックは日本人同士、世界の人々がつながる絶好の機会であり、「ウィズコロナ」「コロナ克服」のためにがんばるものではありません。