蔵の街とちぎ 大毘盧遮那殿 満福寺(満福密寺)

閑話休題

「カルト」と「宗教」のちがいがわからない戦後日本

令和4年09月01日
安倍元総理を銃殺した犯人の供述から、世界統一平和家庭連合(元統一教会)というカルト団体の反社会性がまた世の中をさわがせています。若い頃、大学のキャンパスで耳にしたことのある原理研究会(原研、原理研)や街頭の電柱によくチラシが貼られていた国際勝共連合(反共政治団体)もその関連団体ですが、一時期、霊感商法や多額の献金強要や有名芸能人・アスリートが参加した大規模な合同結婚式で世の中をさわがせたあの元統一教会です。
巨額の寄付金や高額な霊感商品の購入を強要されて家計破綻や家族崩壊に追い込まれた信者の窮状が、団体代表の記者会見での偽言とは裏腹に連日報道され、今でも巨額の寄付や霊感商法が行われているようですが、問題なのは、同団体は、日本が近代の一時期朝鮮半島を植民地支配したことを民族の恨みとし、日本からお金を奪い取って償わせると広言し、巨額の寄付や霊感商品の強制購入によって日本人の信者から収奪した資金を、教祖の野望である世界統一や本部や諸外国での活動の原資に充てている反日団体だということと、さらに教祖の野望を達成するため巧妙な政界工作を行っていて、それに安倍元総理をはじめ多くの国会議員・地方議員・首長らがうまくだまされてきたことです。
彼らは、自民党をはじめとする国会議員・地方議員に選挙ボランティアを通じて接近し、さらには一部信者が議員秘書になって霞が関や国会や都道府県・市町村の庁舎・議会に出入りするなど、巧妙な手口で政界に侵蝕していることがこのたびあぶり出されました。驚いたのは、元統一教会の文教祖とその反共活動を日本にもたらしたのは安倍元総理の祖父岸信介元総理だったということで、それなら、安倍元総理はおじいさんの活動を隠密裏に引き継いでいて、選挙の際、安倍派の候補者の応援のために、元統一教会にボランティア活動と票集めを依頼するとともに、同団体の集まりに候補者を出席させたり祝電を打たせたりしたこともあったのではないか、と勘ぐりたくなります。反日カルト団体の政治的野望にも気づかず、脇甘く付き合ってきたのが安倍元総理をはじめ日本の国会議員・地方議員だったとすると、そもそも国辱ものであり政治家の品位と資質が疑われます。
それはそうとして、元統一教会とかかわりのあった国会議員のあぶり出し、魔女狩り報道を見ていると、日本を代表するメディアさえも「カルト」と「宗教」のちがいがわかっておらず、時には「カルト宗教」などと言ったりしていますが、元統一教会はフランスで言うところの「セクト」「カルト」で、宗教法人の文科省認可があるからといってまともな宗教だとみなすのは誤りです。「セクト」「カルト」は「信教の自由」で判断するものではなく、警察や公安庁や司法がその反社会性で判断対応する団体です。フランスでは、「セクト」「カルト」を見分ける基準として、前号で紹介しましたように10項目を決めていますが、そうした判定基準のない今の日本では、
  1. ①教祖や団体の代表が独裁的で、すべての権力が独裁者に集中すること。
  2. ②その独裁者の言うことには、幹部も一般会員も教祖には絶対服従であること。
  3. ③入会への勧誘の際、組織名・団体名を明かさないこと。
  4. ④巧妙な手口で入会させ、会員・信者を次第にマインドコントロール下に置くこと。
  5. ⑤会員・信者に対し、社会常識を超えた巨額の献金・寄付や高額な霊感商品の購入を強要すること。
  6. ⑥不法な手口で集められた資金で、独裁者が私腹を肥やすこと。
  7. ⑦巨額の献金や寄付や高額な霊感商品の購入を強要された会員・信者が、家計破綻や家族崩壊に追い込まれること。
  8. ⑧家計破綻や家族崩壊のみならず、友人・知人を勧誘し団体の宣伝用印刷物を勝手に送りつけたりして、周囲への迷惑行為を辞さない。
  9. ⑨マインドコントロール下に置かれた会員・信者は人格が大きく変わり、周囲の声に耳を貸さなくなる。
  10. ⑩教義や独裁者の教えというものが、キリスト教や仏教の正統な教理からはずれた、「受け売り」「歪曲」「換骨奪胎」の異端で、無宗教状態の今の日本ではそれに気づかないこと。
が考えられます。もし、家族や友人・知人で以上のどれかに該当する人がいたら先ず「カルト」を疑うべきでしょう。宗教の名を語り、宗教団体を偽装して、実は教祖が政治的な野望をもくろんでいたり、教祖が私腹を肥やしたり、詐欺商法で金もうけをしたり、言葉巧みに人の心に侵入し、「洗脳」し、お金を収奪する、反社会的集団です。
戦後の日本は、憲法の「信教の自由」をいいことに公教育の場で「宗教」を学ぶことがなく、家庭でも教えることができず、一般国民は宗教学はもとより世界の宗教・日本の宗教にも疎く、さらに超自然現象や超自然能力(霊能)や宗教体験・宗教心理のことになるとほとんど無知です。すなわち今の日本人はほぼ無宗教状態、ひいては宗教に無関心、邪教とまともな宗教の区別がつきません。
日本人の無宗教状態は、戦後日本を統治したアメリカを中心とした占領軍司令部(GHQ)のねらった通りで、「日本人の精神的骨抜き」政策の結果でした。戦後憲法の「信教の自由」は、表向きは日本人に与えられた個人の自由の一つでしたが、その裏は日本人を再び「国家神道」による「忠君愛国」の精神に戻さないこと、すなわち「滅私奉公」、自分を捨て天皇陛下のために殉ずるいさぎよい日本兵を出させないこと、何故なら大東亜戦争中の日本兵の忠君愛国の士気の高さに連合軍はさんざん手を焼いたためでした。「信教の自由」は信ずる宗教は何でもけっこうと言いながら、その裏で「国家神道」で心一つになる日本人に何を信じ何をおがんでもいいと言って「日本人の精神的骨抜き」をしたのです。戦後日本はそれにまんまとはまりました。新聞社や雑誌社で記事を書く記者、テレビ局で報道に関わるプロデュ―サー・ディレクターに取材記者のほとんどが宗教の領域に無学無知です。だから報道にできるのは、元統一教会とかかわりがあった政治家の魔女狩りに終始し、魔女狩りの対象となった政治家を叩くことくらいで、「カルト」や「宗教」の本質に迫れません。