蔵の街とちぎ 大毘盧遮那殿 満福寺(満福密寺)

閑話休題

どうなっている、雪国の雪害インフラ

令和5年02月01日
本来北極圏にあるべき寒気団が偏西風の風向異常によって日本上空にまで南下し、日本全国が冷蔵庫となり大雪にも見舞われた1月末の寒波・暴風雪で、新名神高速道路では動けなくなった車両が延々と列をつくって夜を明かし、全国至るところでホワイトアウト現象のなか、スリップ・衝突・車輛故障などの事故やトラブルが頻発し、JR京都線では線路のポイント故障で電車が十数本乗客を乗せたまま立ち往生する一方、雪国では相変わらず高齢者が屋根の雪下ろし・家の前の雪かきに追われ、石川県下ではこんな時に水道管の凍結や破裂による断水や停電水まで起きています。
毎年、同じ時季に、同じような、雪害のニュースをテレビで見るたび、雪国の道路や鉄道や住宅の雪害対策、すなわち雪国の社会インフラや生活インフラの事情を知らない私は「なぜ毎年同じことをくり返しているのか」「なぜ雪国の道路や鉄道はいつになっても積雪や凍結の防止対策ができないのか」「なぜ雪国の住宅はいつまでたっても屋根の雪を溶かして流すなどエネルギー技術的に排除できないのか」と首をかしげてしまいます。
若い頃、スキーに行った先の湯田中温泉だったか野沢温泉だったか越後湯沢だったか赤倉だったか、道路の真んなかにお湯が通ったパイプがあり、パイプの穴からお湯が噴き出して雪を溶かし、車は坂道を楽々走っていました。雪国の知恵と技術で、これから雪国の道路はみなこういうふうになる時代だと思いました。六十年も前のことです。そして、数年前には、金沢の郊外で、国道だったか県道だったか四車線の整備された道路で、同じような道路埋設パイプからの放水テストに遭遇し、昔スキーで行った先で見た積雪・凍結防止のお湯パイプからこの半世紀で、日本の雪国はどこでも道路という道路みな積雪・凍結対策ができていて、車の運行や物流人流に支障がないようになっているものと思い込んでいました。また、雪深い新潟県小千谷市の知人宅では、雪が積らないように屋根にお湯の配管が施されていて、たとえ大雪でも屋根に雪が積らないようになっていると聞いたことがあり、この頃の雪国の住宅はみなそうなっているものと思っていました。
雪国の社会インフラ・生活インフラの事情にうとい私は早合点していました。道路事情も住宅事情も私が思い込んだようにはなっていないのが現実です。科学技術が著しく発達した時代、車などは電気自動車や自動運転の時代、住宅でもオール電化の時代だというのに、雪国における雪害対策の社会インフラや生活インフラ整備は進んでおらず、旧態依然のままのようです。
新潟出身の田中角栄元総理がその「日本列島改造論」で、旧ソ連からシベリア(ナホトカ)経由で天然ガスを海底パイプラインで北海道から日本海沿いの雪国に供給し(先日問題になったロシアからドイツへの天然ガス海底パイプライン「ノルドストリーム」のように)、雪国の道路や屋根を温めて積雪・凍結を防ぎ、冬でも太平洋側に劣らない物流人流や経済活動を確保し、日本海側と太平洋側の経済格差をなくす構想をぶちあげたのは昭和四十七年、五十年も前のことです。田中元総理がめざした上越道・信越道・北陸道・上越新幹線・北陸新幹線は実現しましたが、道路や住宅の雪害対策はいったいどうしたのでしょう。雪国はただでさえ過疎化と高齢化に悩んでいるというのに、七十~八十のおじいさん・おばあさんに雪下ろしや雪かきの重労働をさせていて、この国のどこが福祉国家なのでしょうか。今さら言っても詮ないことですが、田中元総理をロッキード疑惑に引きずり込み、意図的に総理の座から引きずりおろした国際政治の闇がなかったら、雪国にもっと血の通った雪害対策が講じられていたでしょう。