蔵の街とちぎ 大毘盧遮那殿 満福寺(満福密寺)

世事法談

 この「世事法談」は、当山の寺だより「まんだら通信」の「世事法談」の欄に書き続けてきたものです。毎年、新年・5月・9月(お参り月)に折にふれた話題に住職が保守の立場からコメントしたものです。

平成24年(2012)

■新年号より■

●敬礼三宝 謹賀新年
天地は時に非常、かつ非情
ひとたび非常が起れば容赦なく
人に過酷な悲惨と非情の試練をもたらします
平成23年3月11日
天地はなぜ、この国を過激に襲ったのか
科学技術という近代文明を万能と信じ込み
人間の知恵で自然も征服できるなどと
思い上がってはいなかったか
ガレキの山となった近代文明が
この国のやり直しを暗示しています
●菊薫る昨年11月3日(文化の日)、
開創750年慶祝大法会が盛大に挙行されました。当日は500名を越す檀信徒のほか、来賓・工事関係者・一般篤志者・関係寺院諸大徳等々大勢の皆様のご臨席のもと、午後2時より4時半過ぎまで、新本堂において、当山代々先師先徳報恩回向・当山檀信徒先祖代々総回向・新本堂落慶の三回の法要並びに記念式典が行われました。
 最初の当山代々先師先徳報恩回向法要には、当山ゆかりの真言宗豊山派寺院諸大徳がご出仕くださり、750年の法灯を継いでこられた先師・先徳に報恩感謝の回向をしていただきました。
 次いで当山檀信徒先祖代々総回向法要では、真言宗智山派栃木南部教区寺院諸大徳のご出仕により、檀信徒各家の先祖代々の御霊総回向を行いました。
 そして新本堂落慶法要には、宗派の元宗務総長はじめ当山縁故の諸大徳が京都・名古屋など遠近を問わずご出仕をいただき、慶祝法要を営んでいただきました。
 さらに記念式典では、総本山の管長様(代理)より永年功労の役員さんと今回の浄財篤志の方に表彰状が授与され、住職より工事関係者ならびに護寺会役員各位(旧・物故も含む)に感謝状が贈られ、また先般自民党の政調会長に就任したばかりの茂木敏充衆議院議員をはじめ、6名の方々から祝辞をいただき、最後に住職より謝辞があり閉式となりました。
●昨年10月より旧本堂を新大師堂にする改修工事を行っておりましたが、
11月末日に完工となり新しい「祈願堂」になりました。堂内の中央には開運厄除大師、向って右の脇壇には前と同じく三鬼尊、左の脇壇には新たに秘仏歓喜天(通称、お聖天)をお祀りしました。
 「大師(だいし)」といえば日本では弘法大師のことで、当山に永く安置されてきました弘法大師の像をこのたび中央にお祀りし「開運厄除大師」としました。左脇壇の秘仏歓喜天(お聖天様)は強い法力があるといわれ、縁結び・夫婦円満・良縁成就、商売繁昌などのご利益絶大で、きちんと永く信仰すると家門繁栄・子孫長久また商売・事業が繁昌するといわれています。
満福寺 新本堂
満福寺 新本堂

■春号より■

●あれから1年の鎮魂
大地が揺さぶられ、大津波が押し寄せ
あれよあれよという間に、松林もテトラポットも防波堤も
田も畑もビニールハウスも、道路も川も自動車も船も
住宅も病院も学校も役所・役場も
そして数え切れないほどの人の命も、その家族も人生も仕事も
一瞬のうちに大水に飲み込まれました。
犠牲になった東北の皆さんの御霊よ
くやしいでしょう、悲しいでしょう。
どうか、どうか、安らかに
荒ぶる天の神・地の神・海の神よ、鎮まりたまえ。
もういいでしょう。
●フクシマの原発事故後、
1週間の間に飛び散った放射性物質の量は、77万テラベクレル(77万兆ベクレル)。そのうち「セシウム137」は、1万5千テラベクレルで広島型原爆の168個分。
「ヨウ素」は16万テラベクレルで広島型原爆の2.5個分。
「ストロンチウム90」は140テラベクレルで広島型原爆の2.4個分。
昨年4月30日までに海に流れ出た放射性物質の量は、1万5千テラベクレル以上だったといいます。
●8月6日のヒロシマ。
毎年原爆死没者の慰霊式典が行われる平和公園の慰霊碑に「安らかに お眠りください 過ちは繰り返しませんから」とあります。日本は二度と戦争をしないこと、放射能の惨禍を招かないこと、を誓った碑文です。
 しかし日本は、フクシマで二度目の被爆国になりました。広島に落ちた原爆の何倍もの放射能がフクシマの野や山や海を汚染し、安全神話と原発補助金を信じた人たちはふるさとを奪われ難民同様の生活です。日本は核の過ちを自分の手で繰り返したのです。
●毎年どこかで河川の氾濫や土砂崩れが起こるたびに、
避難住民が学校の体育館や公民館などに長期雑居する光景を見るにつけ、豊かなはずのこの国にしては国民の生命と安全を守る方法があまりにもお粗末、もっと言えば非文化的・非人間的で、どうみても豊かな国の国民救護方法とは思えません。
 いかに緊急一時的な避難場所であっても、体育館などの冬は冷たく夏は蒸し暑いあのフロアしかないのか、命の危険にさらされて避難してくる気の毒な被災者を収容するのにもっと人間的な温もりのある避難施設はないのか、救急病院ほどではないにしても、とつくづく思います。
●原発事故以後の東電を報道で見ていて、
東京電力という会社は企業倫理や社会倫理から大変かけ離れていることがわかりました。2002年の8月、アメリカ人の技術者によって福島第1・第2原発のトラブル記録の改ざんや隠蔽が告発されましたが、東電は「記憶にない」「記録にない」の一点ばりで、そのあとの調査を難航させました。
 2007年には日本共産党が、耐震設計想定の2.5倍の揺れがあった中越沖地震の際に、柏崎刈羽原発で起きた放射能漏れと火災事故を教訓に、福島原発に対し「耐震安全性の総点検等を求める申入れ」を行い、2008年12月には国際原子力機関(IAEA)が日本の原子力発電所の耐震設計は時代おくれで、巨大地震が発生した場合にはもちこたえることができないと警告し、福島原発の危険性を指摘したのでしたが東電はそれに耳を貸さなかったと言われています。危険な核を扱う電力事業者として、人命・自然環境への配慮や危機管理の自覚と責任感がまったく欠落しています。
●アメリカの著名な原子力技術者アーニー・ガンダーセン博士は、
「核」燃料冷却プールがむきだしになって危険な状況にある福島第1原発4号機について「もはや科学の力ではどうにもならない、地震が起らないことを祈るだけ」と。冷却プールから「核」燃料を取り出す作業が始まるのが来年暮とか。作業終了の日まで薄氷を踏む事態が続きます。冷却プールが再々の地震で壊れないよう、致命的な放射能漏れが起きないよう、神仏に祈るばかりです。
●思えば、大東亜戦争を強行し多くの犠牲者を出した上、
ヒロシマ・ナガサキに核爆弾の惨禍を招いたのは帝国陸海軍と軍国主義でした。今回、フクシマに核物質汚染の惨禍をもたらしたのは「原子力村」(原子力発電の事業に巣食う官僚・政治家・産業人・研究者・言論人など)と科学万能主義です。
 首都東京を含む東日本はもう少しで人命も自然環境も壊滅するところでした。日本が国家機能をしばらく失ったかもしれません。「原子力村」の人たちには日本の国土・歴史への責任感や次にくる子供や孫へのおもいやりもないようです。その犠牲になったのは皮肉にも2万からの人命と35万の避難者でした。いつの時代も一にぎりの特権・利権が罪なき人を犠牲にします。
●それにしても「ガンバレ東北」は一体どこにいったのでしょう。
東北の復興はガレキの処理から始まることを知りながら、「住民の理解が得られない」と東北のガレキの受入れに消極的な自治体ばっかり。放射能に汚染されていないガレキにまで受入れ反対することは「東北は復興しないでいい」「放射能禍は東北だけでいい」と言っているのと同じ。
 そんななか、東北の人たちにお心を痛められ、ずっとその気持ちを持ち続けておられるのは天皇・皇后両陛下ではないでしょうか。7週間も連続して東北を見舞われ、心臓手術にも耐えられ、なお被災者を励まされる天皇陛下のお姿は、東北に福と恵みをもたらす神様のおとずれ(来訪神)のようです。
●昨今家族だけで行う「家族葬」が増え、
それがいかにも当世風の葬儀のように言う風潮があります。これを仕掛けたのは首都圏の葬祭業社で、同業他社との低価格競争に負けないため、人間関係も薄く費用もかけたくない人を対象に始めた安売り商法です。家族や親族だけで行う葬儀は以前からもありましたし、特段に「家族葬」とは言いませんでした。葬儀の形式や規模や費用は喪主の事情で決めればいいことで、何も「○○葬」などと言わなくてもいいことです。
 但しこの「家族葬」、大都市圏の片隅で隣近所とも交際せず、ひっそりと生きてきた人ならいざ知らず、人間関係が蜜で義理を重んじる栃木周辺ではいかがでしょう。生前中に交際のあった人たちに知らせもせず、まるでこっそりと葬儀を出すことが地方の町で通るでしょうか。普通なら変に思われます。故人の遺志やその他の理由でやむを得ない場合もありますが、いかがなものでしょう。デフレの時代に流されて費用を節約するあまり、人と人のつながりまで薄くするのは自分から「無縁社会」に参入するようなもの。
 この世のなか、人は一人で生きているわけではありません。多くの人にお世話になり、その人たちに支えられて生きています。そうした人たちに最後のお別れをし、故人に代って家族が感謝の気持を表すのが葬儀であり、人としての礼儀です。
 当世風だからといって、あるいは葬儀社に勧められたからといって、あるいは故人の遺志だととりつくろって、よく考えずに「家族葬」に飛びつくと周囲から不評を買ったりすることがあります。何よりもまずお寺の住職に相談することが一番です。
 葬儀の要諦は、ご遺族の皆さんがだいじな家族との別れにあたり、物心両面で納得のいく葬儀が行えるかどうかです。故人のために多くの人が来てくれ別れを惜しんでくれるのは、故人への最高のはなむけであり遺族にとっても最上の励ましで、納得いくものです。

■秋号より■

●儒教の国、今いずこ
中国では昔、皇帝を「君子」といい
儒教の「仁・義・礼・知・信」の具現者でした
皇帝も人々も他国の人に寛容で、大人(たいじん)でした
韓国の王も、韓流ドラマの王のように
儒教を重んじ最高道徳の体現者でした
みんな礼節に篤く慎ましい人たちでした
今の中・韓は、恩をアダで返す恩知らずの国
折りしも今年は日中国交回復40年
しかし、周恩来も田中角栄はもういません
●日本が大震災で未曾有の災難に直面しているというのに、
中国は尖閣諸島に艦船を出し(=香港・台湾の活動家を暗黙に認めている)、韓国に至っては大統領自らが竹島に乗り込んできました。人の弱みに付け込んで武士の情けも何もない、友好国にあるまじき所業です。さらに韓国大統領は、天皇陛下が口にしたこともない、外務省が交渉したこともない「天皇訪韓」を持ち出し、勝手に「訪韓したいなら、植民地統治の犠牲者にあやまれ」です。バカも休み休み言うものです。
●中高年の皆さんなら「李承晩ライン」という言葉をおぼえているでしょう。
この身勝手な海の線引きによって、公海で操業中の日本の漁船が何回韓国に拿捕され、ひどい目にあったことか。竹島はこの「李承晩ライン」の外(韓国側)にあるだけで韓国のものにされました。
 尖閣は沖縄の施政権返還の時にアメリカから日本に返されました。尖閣諸島を琉球とする中国の地図もあります。今になって「尖閣は中国の核心的利益」だなどと言い出す中国も「盗人(ぬすっと)猛々(たけだけ)しい」の下品国です。
●何が良くてそんなに反日が好きなのか。
純真な子供たちにウソの歴史を教えて敵がい心を植えつけ、何がそんなに満足なのか。悲しい国です。その原因が先の大戦の戦後処理の不満にあるのなら、中・韓の指導者はサンフランシスコ条約をよく勉強し、日中友好条約や日韓条約をよく読んで日本と付き合ってもらいたいもの。政治権力の都合で歴史を抹殺したり歪曲したりする国は、国際社会では笑いものです。オリンピックのサッカーで起きた韓国選手の愚行もイギリスではノーでした。
●以下は住職の中学時代の実話です。
中学の卒業式の日、担任の先生を刺すといって、ある男子生徒が短刀を振り回した事件がありました。三年生のクラスのある2階の校舎は騒ぎになりましたが、暴れる生徒を取り押さえたのは同じ三年生の屈強の男子たちでした。この屈強の男子たちと言えば、普段はバンカラですが、勉強もするし運動もするし、しかし肩で風を切って歩くが如く、威圧的で怖いグループでした。短刀を振り回した生徒は彼らのいわばパシリだったので、先生が出るまでもなく簡単に取り押さえられました。
 日頃は威圧的な態度で先生方をしばしば困らせていた屈強のバンカラたちでしたが、絶対に弱いもの・女の子・年下の子には手を出しませんでした。それが、あの頃の男子の仁義でした。別に人から教わったわけでもなく、自ら学習したわけでもなく、先生に特別の威厳があったわけでもなく、男子生徒には15才までにいざという時の男の判断が身についていたのです。
●それどころか、私も含め先生を口と行動でやっつける男子もいました。
先生がわけもなく威張れば反抗し、無理を押しつければ反論し、たまには職員室にまで押しかけました。授業がよくわからない先生には不満をぶつけ、能力不足の先生はバカにしました。そのお蔭で、中学のクラス会にはとんとご無沙汰です。
●それに比べ、というのも口はばったいのですが、
昨今の中学生のいじめは、聞くにつけ実に陰湿で執拗で狡猾な仁義なき虐待。いじめる方は弱い者いじめ専門で、しかもゲームやふざけっこ感覚。多分成長の過程で大脳皮質が発達せず、「ねずみの脳」と「ワニの脳」が異常に働くのでしょう。家庭に問題ありです。
●私たちの中学時代と今の時代で決定的にちがうのはモノの豊かさです。
このモノの豊かさというのが子供の育つ環境に大きな問題だというのが私の持論です。モノが豊かな環境では、人間は「ねずみの脳」(ずるがしこく)と「ワニの脳」(どう猛、乱暴)を働かせ、モノ(獲物)を自分のものにすることで満足します。
 モノの満足はエスカレートしますから我慢ができなくなりまた欲しくなります。モノの豊かな社会では我慢とか忍耐力が著しく低下します。子供や中高年の万引きがそれを裏づけています。私たちは我慢が当り前の時代に育ちました。「もったいない」がよくわかる世代です。今の中学生はせめて運動の部活で我慢や忍耐をおぼえることです。
●大師堂として生れ替った旧本堂に、
当山に古くから伝わる「お聖天様」をお祀りしました。大師堂にお参りの時にはどうぞお上りになり、向って左奥の正面、スダレのなかの「お聖天様」にお参りください。
 関東地方では埼玉県妻沼の「お聖天様」、関西では生駒の「お聖天様」が有名ですが、縁結び・夫婦円満・良縁成就・商売繁昌に絶大なご利益があるといわれています。
 「お聖天様」は強い仏様で、熱心に信仰し拝む人が多く、生半可に拝むと返ってよくないといわれていますが、縁結び・夫婦円満・良縁成就・商売繁昌を願う方は、どうぞ大師堂内の「お聖天様」に願かけ月参りをしてみてください。